財務・資本戦略担当役員メッセージ

SWCCの財務・資本戦略 ~資本コストと株価を意識した経営の推進~

常務執行役員 資本戦略、人事、人財戦略、総務、法務、リスクマネジメント担当
常務執行役員 上條 俊春

 2023年3月、東証より上場会社(プライム市場/スタンダード市場)に対し、資本コストや株価を意識した経営に関する対応や開示についての要請がなされました。
 当社では、2019年度よりROIC経営をスタートし、営業利益等の損益計算書の項目だけでなく、投下資本やそのコストを踏まえた事業ポートフォリオの見直しを実施してまいりましたので、2023年5月12日にそれまでの対応状況を開示いたしました。
 その後、資本効率改善の観点から2023年9月に政策保有株式を一部売却。その売却資金により、11月には約10億円相当の自己株式の取得を実施しました。  好調な業績推移やこうした資本政策を受け、PBRについては改善が進み、安定して1倍を超える状況となりました。
 今後、当社は成長フェーズに進むプロセスにあり、財務・資本戦略も成長戦略と歩調を合わせながら、さらなる高度化を図ってまいります。

01 ROIC経営にさらなる磨きを

 2019年度からスタートしたROIC経営は導入後4年間で平均ROICが7.1%と導入前の3.8%から大幅に改善するなどの成果を上げました。導入当初は、赤字ではないものの投下資本に対して低収益である事業を洗い出し、さまざまな梃入れを実施することでROICの改善を実現してきました。今後は不採算事業の改革に加えて事業全般の「稼ぐ力」の底上げに向け、全社的にROICツリーを現場レベルまで落とし込み、改善していく取り組みをさらに徹底していきます。
 ROIC経営の本質は、ROICを上げ、資本調達コストであるWACCとのスプレッドを拡大することで企業価値を向上させることにあります。ROICを上げる施策は継続して取り組む一方、WACCの水準にも目配りが必要です。株主資本コストを計算する際に使用するβ値はここ数年低下基調にあり、安定した収益計上やリスク・ガバナンス・サステナビリティの強化、株主との対話の充実などによりさらなる低減に取り組んでいきます。
 また、ここ数年の安定した業績により、自己資本の積み上がりが進み、結果としてD/Eレシオも50%を下回ってきました。WACCをコントロールする観点からは、負債調達による一定のレバレッジを利かせることも必要であり、成長戦略の実行に合わせて、成長投資を支えるファイナンスを検討していきます。

当社のROICの推移

02 将来利益はバランスシートから作られる

 ROIC経営を進める上では、PLだけでなくBSを意識した経営への転換が重要となって来ます。当社は「将来利益はバランスシートから作られる」との考え方のもと、バランスシートの継続的な見直しを実施していきます。
 具体的には、政策保有株式や遊休不動産の売却などによる資本効率の向上があげられます。バランスシートのスリム化で捻出したキャッシュについては、成長投資や戦略的投資に充てることで、事業収益の向上につなげていきます。
 また、売上債権の回収サイト短縮や、在庫の縮減などにも徹底的にこだわることで、運転資本の圧縮に成果を上げており、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)の改善に引き続き積極的に取り組んでまいります。

バランスシート経営

03 成長フェーズのキャッシュアロケーション

 これまで取り組んできた構造改革により当社グループの財務内容は大幅に改善し、安定して収益を上げられる体制が整ってきました。
 今後は、キャッシュフローを意識した経営により、EBITDAをしっかりと上げながら、キャッシュアロケーションの原資を確保していきます。
 足元では、主力事業の電力関連の需要が堅調であり、戦略的な投資ニーズが高まっています。また、車載向け事業においても、既存事業の周辺領域への成長投資が想定されることから、こうした需要にキャッシュを積極的に使っていく予定です。M&A等の大型成長投資においては、様々なファイナンス手法を活用した調達も視野にいれていきます。
 一方、成長投資に加えて株主還元についても、従来以上に積極的に対応してまいります。
株主価値向上の観点では、配当性向を引き上げることで、株価上昇と合わせてTSR(株主総利回り)が常に市場(配当込みTOPIX)を上回ることを目指していきます。
 配当性向につきましては出来るだけ早期に35%の水準に到達できるよう進め、収益からの安定配当を実現していきます。また、収益が下振れした場合においても、現下の資本の蓄積状況を踏まえ、一定の配当は安定して還元できるよう検討してまいります。
 成長フェーズにおいては、成長投資と株主還元のバランスに気を配りながら、状況に応じた柔軟なキャッシュアロケーションを実施してまいります。

財務・資本戦略の基本的考え方

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