Strength [vol.06]地震対策で需要高まる免震部材 SWCCのゴム配合技術が貢献する

Strengthvol.06

地震対策で需要高まる免震部材
SWCCのゴム配合技術が
貢献する
2022年2月22日公開

地震多発国 日本で、免震工法に注目が集まる

免震工法には積層ゴムアイソレータが不可欠

地震が多発する日本では、幾多の災害経験を生かし、一般住宅、マンション・ビル、工場など、建築物にさまざまな地震対策を施すようになってきた。構造上の対策として「耐震」「制震」「免震」という3種類の工法があるが、それぞれには違いがある。「耐震」は、建物の壁に筋交いを入れるなどして「揺れそのものに耐える」もの。数々の大地震を経験した日本では、住宅や学校などで耐震工法を用いた建物が多く見られる。「制震」は、建物内部にダンパーなどの「制震材を組み込み、揺れを軽減する」工法だ。「耐震」は、強い地震では建物に何らかの破損が出る可能性が高いが、「免震」は地震によって起こりうる建物の倒壊や内部のダメージを防ぐことを目的とし、建物の土台と地面の間に免震装置を取り付け、揺れを建物に伝えにくくする工法だ。建物の基礎部分が地面と接地している「耐震」や「制震」とは違い、基礎部分の下に地下を掘り、積層ゴムアイソレータ等の免震装置を入れて、地面から建物を浮かしてしまうのが特徴だ。

防振ゴム製造のノウハウを生かし、SWCCが事業参入

当社は、1985年から積層ゴムアイソレータの事業に参入した。振動を軽減させる防振ゴムの開発・製造を1947年頃から手掛けていたことが、この事業参入に大きく関わっている。防振ゴムは、船舶のエンジン振動を押さえる役割や、映画館・音楽ホールなど、静寂を要求される施設の防音用として幅広く利用されている。当社は、電線用のゴムを防振ゴム用に配合を変えて応用していくなど、古くから防振ゴムの開発に取り組み、実績を上げてきた。そこに注目してくれたのが、建築構造分野で権威の多田英之先生だった。多田先生は、防振ゴム製造の技術を免震部材用の積層ゴムアイソレータに使うことを推奨した。

免震構造 従来構造
防振ゴム材
防振ゴム材

No.1の納入実績 天然ゴム系積層ゴムアイソレータ

「絶縁・支承・復元・減衰」 免震に不可欠な4つの機能

建築の際に組み入れる免震部材には、4つの機能が必要だ。地震の力との縁を切るための「絶縁機能」。建物の荷重を支える「支承機能」。建物の位置を元に戻す「復元機能」。そして、揺れそのものを押さえる「減衰機能」だ。天然ゴム系積層ゴムアイソレータは、このうちの「絶縁・支承・復元」の3機能を有している。ラバーベアリング(Rubber Bearing)とも言われる積層ゴムアイソレータは、金属製のベアリングのような機械要素はなく、材料の変形だけでベアリング効果を出せるのが特徴だ。当社では、「絶縁・支承・復元」の3機能を向上させるため、積層ゴムに天然ゴムを使用している。

天然ゴムの特性と配合技術を生かし「絶縁・支承・復元」を追求

「絶縁」については、ゴム自身が変形することでしなやかに地震の力を逃すことができるため、天然ゴムを使うメリットが大きい。「支承」は、いつ来るかわからない地震を想定しながら、数十年間建物が建ち続けることが重要になるため、軟らかいゴム材料であっても天然ゴムを使って積層構造にすることで強度を高めている。海外では約100年支え続けている例もあり、天然ゴムの信頼性が証明されている。「復元」は、大きな変形を受けても元の位置に戻るように、安定した復元力を発揮する。例えば、天然ゴムでつくられた輪ゴムを無理に伸張すると元の形にならないが、そこに当社独自の配合技術を取り入れた。

天然ゴム系積層ゴムアイソレータ
天然ゴム系積層ゴムアイソレータ

「絶縁と支承」に「減衰」機能を組み合わせた「弾性滑り支承」

免震部材に必要な4つの機能のうち、「絶縁」「支承」と天然ゴム系積層ゴムにはない「減衰」を組み合わせたものが「弾性滑り支承」だ。積層ゴムと滑り板で構成され、比較的揺れ幅の小さい地震では積層ゴム部のみが変形し、揺れ幅が大きくなると積層ゴム部と滑り板との間で滑りが生じ地面からの地震力を頭打ちにするものだ。適度な摩擦でブレーキを効かせながら滑りを調整し、免振性能を高めている。

独自の金型成型技術が生み出す鋼板露出型

突出した中間鋼板だから破損の目視が容易

当社が天然ゴムでつくる積層ゴムアイソレータの形状的特徴は、円筒状の金型に天然ゴムと中間鋼板を交互に積み重ねていくものだ。中間鋼板は、荷重を支えるゴムよりも突出させるユニークな形状にしている。当社はこれを「鋼板露出型」と名付けた。鋼板露出型は、ゴムの層と中間鋼板の整列が一目でわかり、免震部材の破損部分を発見しやすく、品質管理面でメリットがある。

鋼板露出型と従来型の構造比較
鋼板露出型と従来型の構造比較

ゴム層に伝わる熱履歴を均質化

当社が提供する標準タイプの積層ゴムアイソレータには、中間鋼板が25枚使われている。25枚の鋼板の間に入る天然ゴムには、加わる熱履歴が均質化されなければならない。ゴムに伝わる熱が均質化されると、表面に近い外側と中心に近い部分のゴムの固さが均等になり、積層ゴムの命とも言える荷重支承能力に優れ、安定した変形に対応できる。また、水平剛性の面圧依存性が極めて小さくなり、接着性も良くなる。

水平剛性の面圧依存性

バリエーション豊富な免震部材のご紹介

SWCCが挑むこれからの免震の在り方とは

地震が多い日本では免震建物が注目され、人命はもちろん、貴重な財産や文化財を護り、BCPの観点からも事業用設備やデータなどの保護を目的に建設が進んできた。免震建物は、これまで官公庁、病院、防災センターなど、地震の後であっても確実に機能しなければならない建物をはじめ、マンション、オフィスビルなどを中心に普及し、最近では、eコマースの拡大に伴う大型倉庫や、大規模データ通信に不可欠なデータセンタヘの採用も増えている。免震建物は、もはやサステナブルな社会に欠かせない存在になってきた。
当社は、さまざまな建築条件に対応するため、お客様の声に耳を傾け、最適な免震システムの提案を行っている。今後想定されている複数の大地震から少しでも多くの人命・財産を守るため、より多くの免震建物の普及に貢献し、お客様が設計しやすく工事しやすい、高性能な免震部材の開発に努めていきたいと考えている。

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